遠き40年代に思いを馳せて。 Reynoldsというトランペット

私の手元にReynoldsというトランペットがある。海外からずいぶん安く手に入れたものだが、そこそこにやつれている。

 

ベルにはつぶしたのを修理したらしき跡があるし、ラッカーは半分以上ハゲている。3番管のリングは無くなっていたので、別のものをつけている。幸いにしてあまりサビはなくて、凹みは修繕されておりリードパイプも綺麗な状態を保っている。バルブも機密性を保っている。一応きちんとした演奏に耐えうる楽器だ。

 

シリアルでググったら1946年製のようだ。一体1946年からどのようなオーナーを経てうちまで来たのだろう。

 

今日はこのReynoldsという楽器について

このReynoldsというブランドのトランペットはとってもマイナーな楽器だが、Jazzのファンなら、特にマイルスデイヴィスのファンならご存知かもしれない。

マイルスデイヴィスのブルーノートのアルバムのジャケットの写真でマイルスが吹いているのがこのReynoldsなのだ。

 

私自身、大きな写真で見たことはないのであのマイルスのトランペットが私の手元にあるモデルと同じモデルなのかどうかはわからないけれども、40年代のReynoldsブランドのトランペットのモデル名などの資料が全然ないので見た目で判断するしかない。見た感じ、ほぼ一緒である。生産台数もあまり多くなく、各部ずいぶん凝った作りなので高級機種ではなかったにしろなかなか良い楽器だ。

 

音色は現在出回っているYAMAHAやBACHなんかのトランペットに比べてずいぶん柔らかい。フリューゲルホルンまではいかなくても、音にちょっと張りがあるコルネットぐらいの音色だ。ベルのテーパーが緩くて太めなせいもあるだろう。ラッカー仕上げなのだけれどそれほど明るい音ではない。40年代のジャズなんか聞くと、50年代以降の人たちよりもトランペットの音色は明るめの感じがするが、まあ、意外とこういう楽器でああいう音を出してたんだろう。

 

ピストンのケージングなんかが妙にレトロなデザインで、パッと見Connなんかの下バネのピストンかと思いきや、意外とモダンなデザインのピストンだったりする。ピストンのストロークはMartinと同じ位の少し長めで、カチャカチャ言わない静かなピストンだ。この辺りも作りの良さがうかがえる。

 

ちょっと癖のあるところがあって、この楽器妙にピッチが低いのだ。私はチューニングスライドをほとんど出さずに使っている。きっとマウスピースのシャンクが今のBACHの規格と厳密には違うのではないかと思われる。古い楽器は色んなところの規格が独自なのでわからない。

 

そういうことで、ちょっとレトロなデザインで癖のある楽器なのだ。そして、吹いてみると、良く言うとずいぶんソフトでダーク、悪く言うとなんだか今の楽器のようなレスポンスの良さとハリがない。まあ、これはこれでいいのだが。じゃあメインの楽器にするかと言われると、Martinがダメにならない限り、これをメインにすることはないかもしれない。いや、Martin Committeeなんかよりずっとダークでソフトなサウンドは出しやすいし、個性がある楽器だ。そこはいいんだけれど、これ一台でやっていけるかちょっと心配。

 

一丁前にそんなことは言ってみたものの、私はライブや外でバリバリ吹いているわけでもなく、自宅で練習して、一年に何度か勇気を出してジャムセッションに行くぐらいなのだ。好きな楽器を好きな時に使えばいいのだが、楽器ってなかなかそういう風に使い分けられるもんじゃない。特にいつも決まったところで同じようなものを吹いていると、コロコロ楽器を持ち替えようという気持ちにならない。

では、なぜこの楽器を手元に置いているか。

 

それは、この楽器を吹いていると今のトランペットにはない感覚を得れるからだ。今の楽器にはない緩さ、音色に包まれる感じ、吹奏感。ああ、これは40年代にアメリカのどこかのトランペット吹きが感じていた何かなんだな、よくわからんけれども46年製だから丁度ビバップが流行った頃に誰かが使ってたんだな。その人はジャズトランペッターだったろうか?オッさんかな、学生かな。

そんなことを考えられるのがこういう古い楽器のいいところだ。

 

ものすごく安い値段で、ビバップが流行っていた頃のアメリカで使われていたトランペットを手に入れた。