Chet Bakerから学ぶことなんて無くたっていい

Chet Bakerが生前最後のカルテット録音となったローゼンハイムでのライブ録音を聴いている。

Chetは晩年おびただしい数のライブ盤を発表している。私も全ては持っていないがかなりの数を持っており、しばしば聴く。もちろん演奏のクオリティーはまちまちになっているが、さすがトッププロ全てのアルバムでチェットの個性は光っているし、チェットのアルバムに仕上がっている。

 

チェットは時に、自分の楽器すら持ち歩かずにヨーロッパ中をツアーした。その所々で録音を残している。ライブだけでなくスタジオ録音すら旅先で行っていることもある。それらの一枚一枚を聴いていても、やはりチェットのアルバムに仕上がっている。

 

チェットは教材として聴けるようなミュージシャンではないとおっしゃる方もいるが、チェットのトランペットソロは8部音符で丁寧なアドリブになっていることが多く、メロディアスで鼻歌でも歌いやすいのでフレーズをコピーするのは比較的簡単だ。そして、それがどれもチェットのサウンドになっていて、とても魅力的である。だから、チェットのレコードから学ぶものは多い。

 

ただ、チェットベーカーになりきったところで、それはあまり意味のないことかもしれない。なぜなら、チェットは個性的であれ、と言い続けたミュージシャンで、チェットベーカーから学ぶべきことは、誰かのレコードから借りてきたサウンドを演奏してもそれはあまり意味がないことだということだ。模倣するなら自分自身を模倣しなさいということ。だから、私は黙ってチェットを聴く。