下手くそでもMartin Committee

たとえ下手くそでも、たとえ初心者でも使う楽器は大切である。

 

所謂エントリーモデルを買うことはない。はじめっからプロフェッショナルモデルを使っちゃいたい。もう、この際ビンテージのプロフェッショナルモデルなんか使っちゃってもいい。

誰も怒らない。自分の金払って買うんだから、人様に迷惑はかけない。迷惑なのはわけわからん古い楽器に大金を払う夫(妻)を持つ家族ぐらいだろう。

でも、だってあのチェットベーカーがジャケの写真で構えてるあの楽器、吹いてみたいでしょう?

それで、あれである。 Martin Committeeである。

チェットベーカーだってマーチン、マイルッスデイビスだってマーチン、アートファーマーだってマーチン、ハワードマギーだってマーチン、ケニードーハムだってマーチン、ディジーガレスピーだってマーチン、リーモーガンだって初期はマーチン。ブルーミッチェルだってマーチン、ニニロッソだってマーチン。マーチンはマーチンでもインディアナとかインペリアルとかじゃない。

 

もう、マーチンと言ったらコミッティ、Martin Committee。

トランペットのホームラン王!

王貞治だって

 

やっぱりコミッティはラッパのホームラン王です。

 

って、テレビで言ってたような気がする。いや、王貞治がそう言ってなくてもMartinって言ったら「D28!」とか返されそうだけど、そうじゃない。ギターのホームラン王は「D28」ラッパのホームラン王は Commitee。

 

ジャズのトランペッターの大半、特に47年以降に活躍したビバップ、ハードバッププレーヤーはマーチンを一度は通ってる。

これにはいろんな理由があって、まずディジーガレスピーのビッグバンドのトランペットセクションが50年代の頭頃にみんなマーチンコミッティのアップベルのモデルで揃えた。だから、リーモーガンは若いころコミッティを使ってた。それと、やっぱりマイルスが使ってたっていう影響も強いんだろうけど。チェットベーカーがコミッティを選んだのは多分マイルスの影響だろう。

あとは、マーチンのコミッティっていうのが画期的な楽器だったからだろう。あの、ニニロッソだって使ってたんだから。

 

マーチンのコミッティのコミッティて「委員会」って意味なんだけど、コミッティを開発した時に実際にその委員会っているのを一応結束してるんだ。

 

メンバーはレノルドシルキー、ヴィンセントバック、フランクホルトン(いたかな?)、エルデンベンジ、LA交響楽団のトランペットセクション、

他にもいたかもしれないけど、そうそうたる面子。モダントランペットの創始者全員みたいな感じ。それでみんなでああでもないこうでもない、どうでもいいだろこの際、とか言って作ったらしい。

らしい。一説にはレノルドシルキーが一人で考えて作ったって話もあるけど、今じゃ考えられないくらい画期的だったんだろう。

 

けど、今日生きいる私なんかは、別に画期的だったからコミッティが欲しいわけじゃない。画期的なんてどうでもいいんだ。それより、この Martin Committeeが醸し出すなんだか胡散臭いオーラなんだよ。こいつはあの、モダンジャズのスカスカフワフワしたあのダークなトランペットサウンドの立役者なんだと思うと、もう、それだけで「欲しい!」「吹きたい!」

 

で、実際のヴィンテージ、安売りしている時に買って持っているんですが、コミッティーって、別に特別ダークな音がする楽器っていうわけでもない。Mボアの普通のイエローブラスだから、普通に吹けばパリパリ明るい音が鳴る。

 

でも、それだけじゃないんだ、息を多めに吹き込んでサブトーン気味にならすといきなりダークでニヒルな音になる。細いリードパイプのくせに息入れやすいんだ。パリパリから、フカフカっていう鈍い鳴りにころっと変えられる。それに低音もかなり鳴らしやすいし、高音も比較的吹きやすい。

やっぱりジャズの楽器として押さえるところ押さえてるし。ピッチのベンドもしやすいから(ピッチ安定しづらい)そういうのにも向いてるんだろうな。バックやらヤマハとは随分違う設計思想で作られている。

 

コミッティデラックス、こっちはチェットベーカーが愛用してたんだけれど、も安売りしてるときに買って持っているのですが、このデラックスっていうのがコミッティの兄弟モデルなんだけれど、ちょっと違う。どちらかと言えば角が落ちたコミッティ。バルブケージングが洋白になっていたり、リードパイプやメインの管が洋白になっている。パーンと鳴らした時も、コミッティのように華やかにきらびやかに鳴るんじゃなくてもっとまとまった感じで鳴る。ピストンをカタカタ言わせた時の音の響き方も、デラックスの方が上品に鳴る。低くこもった音でカタカタいう。

 

それでも、ピッチのコントロールの幅が広いことと、音色が吹き方でコロコロ変わるのはやっぱり共通している。

 

はっきり言ってしまえば、結構コントロールが難しい楽器。けれども吹いていて楽しい楽器であることには変わりはない。ギアシフトがシビアでシャープなスポーツカーみたいなもんなんだろうか。

 

私はトランペットを大学一年生の春に始めた。もう15年以上前の話。15年経っても全然上達していないんだが。始めた年の冬にMartin Committeeを買った。13万円だった。黒いラッカーのホルトンが作っていたモデルだ。

そして大学5年生の時にその楽器を手放した。

そして、その後長年その楽器を手放したことを後悔して、何台かのMartin  Committeeを買った。はじめに持っていたコミッティもコミッティの名に恥じぬ厄介な楽器だった。とても好きだった。手放した理由は、持っていると上手そうに見えるから恥ずかしいという理由だった。そしてつまらぬ、カンスタルベッソンを買った。とてつもなく地味な楽器だった。

恥をかいてもいいから、あの楽器を手放さなければよかった。売った時は二束三文だった。

 

だから、楽器を愛する皆さん。

初心者でも思いっきりいいやつ買って使ってください。バックのストラッドでもいいし、ヤマハの83でもいい。そして、ジャズをやるのであれば、楽器屋にはひっそりとConnのコンスト、チンマーのコミッティ、セルマーのKモデファイ等、カリキヨなんかが並べられバックヤマハにはない個性ぞろいなので、そっちも目を向けてみてください。

一度コンストを手にしたら、その後10年以上楽器探しの旅が始まると思います。

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コメント: 1
  • #1

    harry horn (火曜日, 14 11月 2017 18:29)

    is it for sale