今は全然聴かないけれど、Freddie Hubbardと聞けば今でも心は熱くなる

Freddie Hubbard、彼こそはワンアンドオンリーだ。

 

駆け抜けるような8分音符、飛び出すような16分音符、ひねり出すようなハイノート。ダークでスモーキーなトーンでテーマを吹いたかと思うと時として煌びやかに響くビックなサウンド。トランペットっていうのはこうやって吹くんだ!って、いうみなぎる自信。トランペッターなら必ず一度は憧れるトランペッター。

 

今日は孤高のヒーロー、フレディーハバードについて。

学生の時、フレディーハバードが好きだった。どんなトランペッターより好きだった。あんな風には絶対に吹けないことはわかっていながらフレディーのアルバムを拝むように聴いた。もう恐ろしすぎて、コピーしようとか一度も思ったことはない。そもそも全然トランペットの練習をしてなかったから、コピーを試みても4小節もコピーできなかったろう。

 

フレディーの果敢さが好きだった。小難しいことは抜きにして、勢いで吹き切っちゃう(いや実際はかなり高度なこともやっているんだけれど)。フレディーもう、そんなハイノートヒットできないよ、もう体おかしくなっちゃうよ、っていうところで果敢にその上をヒットしてくる。そういう男気が好きだった。特に CTIやコロンビアから出てるアルバムを聴いていた。ブルーノートから出ているアルバムはなんだかちょっと頑張ってカチッとしたジャズをやっているようであまり聴かなかった。特にハービーのクインテットで吹いているやつは、ハービーやショーターのどうも賢そうなジャズを一生懸命吹いているという感じで好きじゃなかった。実際はブルーノートからも結構かっこいいアルバム出ているんだけれど(ジョーヘンのアルバムとか)。

 

フレディーの手グセフレーズが好きだった。

なんだかイヤにモダンでカッコイイ手グセフレーズを持っていて、それがしょっちゅう顔を出すのだが、これがなんだか落語のようで小気味好い。ブルーノートでデビューした頃はいろいろメロディアスで長尺な高速フレーズを吹いていたはずなのに、70年代以降くらいのライブ盤では(いやライブは最初っからそうかも)お決まりの展開で攻めてくる。これがいかにも、

 

フレディー来ました!

 

って感じで良い。フレディーハバードが嫌いな人はきっとそこが嫌いなんだと思う。

 

フレディーは吹いている姿もカッコイイ。

大きな体をダブルのダークスーツに包んで、スラックスは太めで、カリキオのトランペットを真正面に構えて、全身全霊で吹く。ソロの途中で時々マウスピースを口から離して、ちょっと耳を掻いて、また全身全霊で吹く。晩年は唇の調子を崩して大変だったらしいが、気の毒である。あれほどラウドにカリキオを鳴らすカッコイイトランペッターだったのに。

 

そんなに好きだったフレディーハバードのレコードを、全く聴かなくなった。騒がしいからである。

疲れたサラリーマンになって以来、騒がしくて熱い演奏がどうもダメになってしまった。フレディーハバードを始めとする60年代以降の、モダンで、騒がしくて、ちょっと小難しいジャズを全く聴かなくなった。

その代わり、ジャズといえばチェットベーカーばかり聴くようになった。チェットベーカー以外のジャズとは長らく遠ざかっていた。チェットベーカーはジャズの中でも特殊なジャンルである。編成を変えながらも頑なに50年台前半のジャズを吹き続ける、静かに、ソフトに、暗く。フレディーハバードとは対極の音楽である。

 

しかし、今日の昼休みに入った喫茶店で、どのレコードかはわからないが、フレディーハバードのライブ盤がかかっていて、その高速16分音符にしびれてしまい、今夜はフレディーのライブアルバムを聴いている。1980年、サンフランシスコのKeystone Konerで録音された「Pinnacle」というアルバムである。クレジットではテナーが入っていて、実際テナーとやっているのだが、今までずっとフレディーのワンホーンだと思って聴いていた。それほどフレディー節に満ち溢れている。もうはじめっからいかにもフレディーっていう勢いのいいトランペットで幕を開けるし、ソロも所々におなじみのフレーズが飛び出したり、高速16分音符フレーズが続いたりと、かなりお腹いっぱいになる。

 

選曲もフレディーの有名曲(First Light、One of Another Kind等)も入っているし、スタンダード(The Summer KnowsとGiant Steps)も入っている。4曲めに入っている8ビートの「Happiness is Now」っていう曲がいかにもこの時代のフレディーのサウンドでカッコイイ。

 

聴いてみたら、やっぱり良いから、これからも時々フレディーハバードのCD聴こう。