再会の哀しみとJeff Beck "Cause we've ended as lovers"

店のスピーカーからCharlie HadenのArt of Songが流れ出した。

若手の熱いライブのあとにはちょっとしっとりし過ぎるような選曲だが、これも悪くない。今夜のライブはイキが良くて、それでいて奇麗にまとまっていて、とても楽しかったのだ。私は、カウンターにおいたままになっている自分のジムビームのグラスをふと見つめて、できるだけ然りげなくそれをあおった。

 

「あ、これカルテットウエストの、アートオブソングですよね。僕好きなんです」とマスターに話しかける。マスターもこのアルバムが好きだという。こういうところの好みと、お酒のセレクション、そして若いミュージシャンが目一杯張り切って演奏している、それが好きでこの店に来ているのだ。もちろん、私の目当てはピアニストの彼女なのだが、この際そのことはどうでも良いのだ。こんなステキな店で、ステキな音楽が聴ける。それだけのために、ここ下北沢のアポロに今夜はきているのだ。

 

演奏を終えた、ピアニストの彼女が、共演者に挨拶をしながら、客席で彼女の演奏を聴いていた彼女の知り合いに声をかける。愛くるしい笑顔で客席に近寄る彼女の姿を見ると、彼女のお友達は本当に羨ましいと思う。今まで、美しく淡麗なピアノを鳴らしていた彼女が、笑顔で声をかけてくれるなんて、天使にキスをされるような気分がするだろう。

若手のミュージシャンが集うこの店は、それがために、決していつもお客さんで一杯になるというわけではないのだが、今日はとても気分のいい3月の下旬の夜、外では夜桜が割いているせいか、ピアニストの彼女の大学時代の友人が集まったようだ。