偉大なフィルムの思い出に。ECMってなんだかよくわからん

私はKodakのTri Xっていうフィルムを長らく使っているのですが、昨今のコダックの状況から見ると、Tri Xが生産中止になるのも時間の問題だと思います。今現在中判と35ミリはTri X以外のフィルムは使っていないので、Tri Xがなくなると実質フィルムで写真を撮ることは無くなるでしょう。

 

わずかにとっているシノゴも、フィルムが無くなってしまってはとれなくなるのですが、せめてシノゴのシートフィルムだけにはこの世から無くなって欲しくないです。35ミリはデジカメで替えられるし、中判はパノラマも含めてもうこの際諦めてやめるしかないでしょうけれど、シノゴの写真が撮れなくなると、とっても悲しい。だから、中国人やクロアチア人とかに頑張ってもらって、シノゴのシートフィルムは作り続けて欲しい。欲を言うと、ブローニーもできるのであれば作り続けて欲しい。

私の手元にあるカメラは9割型フィルムカメラで、それらは現在でも撮影に用いているので、フィルムが無くなってしまうと、Tri Xが無くなってしまうと、写真器材の大半がゴミになってしまいます。

 

だから、私がデジタルに完全に乗り替えなければ、写真とのおつきあいを続けられなくなることはほぼ確実に予想できます。問題は、デジタルとのおつきあいをいつから、どれ位親密に行っていくかですが、それについては、もう少し考える時間が欲しいです。

 

それで、今日は気を取り直して音楽の話。

 

私は、普段殆どクラシック音楽を聴かないのですが、正月にテレビでやるニューイヤーコンサートはなんだか知らないけれど、見てしまいます。それで、今年も見てしまいました。

 

そのニューイヤーコンサートの影響で、チャイコフスキーの音楽に興味を持ち、今日一枚のCDを買いました。ギドン・クレーメル(Gidon Kremer)がECMから出している、チャイコのトリオをやっているCDです。『偉大な芸術家の思い出に』というなんだかロマンチックな邦題のついている曲なのですが、さすがはチャイコフスキー、泣きのメロディーでグイグイ引っぱってきます。

 

このCD一番はじめには、なんて名前かは忘れたけれど、ナントカキーシンっていうロシアの作曲家の三重奏の新曲が入っているのですが、私は最近の音楽に疎いもので、この音楽をどう聴いていいのかわからないまま聴き流してしまいました。じっくり聴いたら良い曲なのかも知らないけれど、チャイコフスキー程キャッチーな音楽ではなかったです。

 

それで、じゃあ、クレーメルが演奏するチャイコのトリオはどうなのかって言いますと、泣きのメロディーを暗ーく、ジットリと、そしてちょっと古臭い演奏で聴かせていてなかなか素敵です。

 

ECMってマンフレッド・アイヒャーのジャズのレーベルなのですが、たまにこういうクラシックの音楽のCDも出しているんですね。ECMはそもそも、ジャズのラインナップもかなりフリー寄りで、ちょっと現代音楽的なものが多いので、その中にクレーメルのトリオの演奏が入っててもそれほど違和感ないのではないかと、思いましたが、実際チャイコのトリオを聴いてみると、案外クラシカルでメロディアスな演奏でちょっとびっくりしました。

 

これは、ノンサッチからピアソラ出してたクレーメルの路線ですね。ECMだからって現代的な解釈を期待してたので、意外でした。こりゃ、ナントカ・キーシンの曲でECMの独自性を出して、セールスのこと考えてチャイコのトリオ入れたんじゃないかって思うような無いようです。

 

じゃあ、そのKremerトリオが演奏するチャイコの演奏がつまらないかっていうと、全然そんなことはない。むしろ、チャイコフスキーの美しく親しみやすいメロディーを楽しみながらも、イージーリスニングのようにしてしまわない独特の暗澹とした部分を残していて、これはこれで素晴らしい。このCDチャイコフスキーしか入ってなくても充分買って聴く価値はあると思います。

 

さっきからKramerのことばかり書いておりますが、チェロもピアノも音が濃厚かつロマンチックで素晴らしい。クレーメルってカメレオンみたいにいろんな表現できる人なので味付けが薄味な時もあるのですが、このチェロとピアノの味付けの濃さからいくと、クレーメルのヴァイオリンで丁度良いのかもしれません。

 

チャイコフスキーのこの曲の他の人の演奏を聴いたことないのですが、このCDを聴いてしみじみ良い曲だなと思いました。生で聴きたいと思いました。クッキーとお茶に合うようなクラシックではありませんが、人間こういう音楽が必要な時もあります。

 

特に、コダックの行く末を案じながら、複雑な気持ちでこのチャイコフスキーを聴くと、きっとどこかに救いがあるのではないか、神様はきっと最も良い方向に写真を導いてくれるのではないかという気持ちになりました。あ、でもこの曲そんなハッピーエンディングではありませんよ、暗い結末の曲です。念のため。

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