初めて会社に自己満足のスーツ着ていった記念日。Martin Sons & Co.,

あたしは、新卒で入社した会社の新入社員研修で、服装についての訓示があり、そこで、「社会人というのは、周りの人が不快でないような服装をするべきであり、自己満足の服装ではいけない」と言われて、それから5年ちょっとの間、今日までその教えを守ってきました。社会人たるもの、ヒトの目を気にして、ヒトが不快ではない、地味で、質素で、あんまり尖ってない、かっこ良過ぎない背広を着るべきだと思って今日まで過ごしてきました。

 

その認識は今でもそんなに変ってはいないのですが、今日初めてその殻を割りました。初めて自己満足で、「これ着て会社に行きたい」っていう服を着ていきました。

今までも、決して格好悪いスーツ着ていたつもりは無いんだけれども、背広からできるだけお洒落の要素を取り除いた、「背広原理主義」みたいな思想に基づいた背広を着て会社に通っておりました。

 

背広はだいたい国分寺の「吉田スーツ」というお店で作っているのですが、吉田スーツで作るとお洒落になりすぎるので、仕事に行く背広の殆どは吉田スーツではない既製服の中でも控えめなデザインのものを選んで揃えておりました。吉田スーツで作る場合も紺無地のスリーピースとか、男心をくすぐられながらも、それほど目立ち過ぎない服を仕立てておりました。

 

そんな感じで、今まで会社へ着ていく服は、守りに次ぐ守りを貫き通して、シャツもいつも白無地のモノを着ておりました。その基本スタンスは今でも変らないのですが、先週末見つけてしまった。

 

マーチンソンのフレスコで仕立てられたダブルのスーツ。

 

ダンディズムを形から入る小心者の男にとってはたまらないアイテム。今までのスーツ人生で一番カッコいい買い物です。それもただのダブルじゃありませんよ。ラペルちょっと太めの、ブリトラの香りを残したディテール。背広なんてどれもそんなに変らないのですが、こういう背広着れるんだったらサラリーマン冥利に尽きるね。

 

お値段は、バーゲンでも結構良い値段しましたけれど、買ってしまいました。

 

私が18歳位のときに親戚から背広のお下がりもらったんだけれど、その中に英国の生地で仕立てられたダブルの背広があったのですが、お尻のサイズが合わなくて着れなかったのです。その背広を惜しむ気持ちもこれですっきり解決致しました。

 

開高健がなんかの雑誌で、背広の基本は紺無地のスリーピースみたいなことをおっしゃってて、まあ、こんな方もそういうどうでも良いようなこと拘るのねって思っておりましたが、私もヒトのこと言えないです。

 

ジェントルマンは小心者なのですよ。自分がダンディーに見える為には、細かいこと気にする。靴はピカピカに磨かれてないといけないし、シャツはぱりっとしてないといけない。でも、今日まで会社に行くのに格好のことなんて全然気にしてなかった。そのせいもあって月曜から金曜の背広を着て会社に通っている自分は仮の姿で、本当の姿は週末の自分である。と考えていた。

 

でも、今日吹っ切れたのです。

月曜から金曜まで会社で働いてる自分も、本当の自分で良いじゃないか。そのことを受け入れる為に、試しに着たい服着て、会社に行ってみたのです。そしたら普段となんも変らない。

 

なーんだ、これで良かったんだ。

 

って思いました。

 

これからも、マーチンソンの背広を大事に着て、着る度にこのことを思いだして、気持ちを新たにしようと思います。