報道写真家としてのJosef Koudelkaの偉業

Street Photographyについて語るとき、今日紹介する一人の天才写真家の存在を無視することはできない。彼の写真は、どこか幻想的で、詩的で、それがかつて本当に存在した風景であるということを疑いたくなる程である。

 

彼の代表作「Exiles」のプリントを一度近代美術館で見たことがあるけれど、誰がプリントしたか解らないそのプリントは、白と黒のコントラストによって出現した、空想の世界のように見えた。

 

スナップショットの天才、Josef Koudelkaである。

今日、秋葉原のヨドバシカメラの上の本屋で、一冊の写真集を見つけた。Koudelkaの出世作である1968年プラハ侵略の写真集である。彼は、この写真でキャパ賞をとっている。発表されたときは、あまりにも政治的に危険な写真であった為、匿名の写真家の写真として発表された。それはまぎれもなく、プラハに一人の天才写真家が存在する証明だった。

 

報道写真として優れていたというだけではない。キャパやブレッソンの作り上げたストリートスナップの方法論に、ラフで、絶妙なバランス感覚を持ち込んだ新しいスナップショットの手法を取り込んだ新しい写真のあり方だった。

 

いや、クーデルカの写真が新しいとか、前衛的であるとかは実際からの写真の前ではどうでも良いことなのだ。クーデルカの写真には、故郷を追われ彷徨う一人の人間の視線が少し暗い影をおとしながら再現されている。何かを失うことでうまれる暗く悲しい写真である。

 

そうでありながら、彼の写真を見ていると世界が不思議にあふれていること、遠い異国への憧れなんかが想起され、ある種のロマンチックさすら感じられる。暗く悲しいロマンである。

 

そして、彼のプラハの写真は最近復刻されて洋書では出てたのだが、6000円ぐらいして結構高価だったのだが、今日書店でその日本版が平凡社から出ていた。お値段3,800円である。これは買わねばなるまい、と思ったのだけれど、今日は既に別の買い物をしてしまったから買わずに帰ってきた。

 

クーデルカの写真集はそのほとんどが絶版になってしまっていて、ものすごく高い。それに比べれば3800円はお得である。写真集って優れた写真集ほど絶版になっていてものすごく高い。だから、売っているうちに買わないと。

 

と言うわけで、今本屋にはストリートフォトグラフィーのあり方を変えた、一冊の素晴らしい写真集が売られている。ご興味が湧いたなら、是非一度手に取ってみて欲しい。