軽薄短小大いに結構。単焦点レンズ Kodak Ektar 127mm

当たり前のことだけれど、写真はカメラを用いてしか成立しないものだ。にもかかわらず、写真作品について語られるとき、撮影に用いたカメラについてあまり語りたがらない写真家は結構多くいる。カメラについて思うとき、そのことが私は不憫でならない。

 

カメラについてあまり雄弁に語ると、「写真作家」という(崇高な)存在から、単なる「カメラ小僧」に成り下がることを危惧しているのだろうか。「カメラ小僧」でも良い写真を撮れるのであれば、つまらない写真を撮り続け、発表し続ける多くの「写真作家」よりもよっぽど素晴らしいと思うのですが。いかがでしょう?

 

かく言う私も、大学の卒業論文のテーマも「カメラについて」だったくらい典型的な「カメラ小僧」なのですが、今までブログではあんまり撮影機材については語らないできました。心のどこかで「カメラ小僧」よりも「写真作家」でいたかったのかもしれません。すみませんでした。

 

けれども今日は違います。撮影機材について書きます。

とは言っても、いきなりライカについて書いたりしたら、典型的な「カメラ小僧」のようで気恥ずかしいので、ここはグッとシブくレンズについてです。

 

レンズ、って写真の「上品か下品か」を左右するとっても重要な要素だと思います。ピントが合っているところと、アウトフォーカスになっているところの描写のバランスが良いレンズで撮影された写真のプリントを見ると、「美しい」と感じるし、ボケが汚い写真はちょっと言い方は悪いですが、下品に見えます。ボケだけでは有りません。レンズのもつ様々なファクターが、でき上がる写真を大きく左右します。

 

例えば、サリー・マン(Sally Mann)の写真をご覧なさい。彼女はどんなレンズを使っているのかは知りませんが、随分古いレンズを使っているようで写真の四隅は少しながれていて、ピントも合っていないのですが、そのアウトフォーカスになっている四隅がフワッとしていてとても美しいのです。それが、ピントが合っている箇所ををよりシャープに見せて、とてもバランスの良い写真に仕上がっているのです。

 

それじゃあ、具体的にどんなレンズが良いのかという話に移りましょう。

 

私は、ズームレンズというものは使わないことにしています。あれは、便利だけれども、便利なので、ついついズームで画角を決めようとしてしまいます。そのせいで、写真がブレてしまったり、背景が汚くなってしまったり、色々な失敗をしてしまったことが有るので、ズームレンズを使うことはきっぱりとやめました。ズームなんて使わなくて、画角もほとんど変えないほうが、写真の見た目の印象をそろえることができるのです。写真は何枚もの写真を纏めて「作品」として見せることの方が多いので、見た目の印象をそろえた方が、見ていて疲れません。小津の映画をご覧ください、見た目がそろうということがどういうことかよくわかるから。そういう事情もあって、私の家では曾祖父の代から曾孫の代までズームレンズを使わないことが家訓となっております。

 

それじゃあ、単焦点レンズでどんなレンズが良いか。なかなか難しい問題ですが、私はできるだけ暗いレンズを使うようにしています。普段使うフィルム(デジカメも)の感度が400のこともあり、いつもだいたい絞りはf11か、f8ぐらいで使っています。明るいレンズは、絞りを開けて使うことを主眼に作られているので、絞りを開けたときにボケがきれいになるように設計されているので、絞り込んで使う場合、レンズの明るさはあまり必要ありません。暗いレンズの方が、コンパクトだし、光学的にも無理しないで設計されてますので、ボケとピントが合っているところのバランスが良いことが多いです。これは、私の主観なので人によって評価が分かれるところでしょうけれども。

 

レンズの個性があからさまに出るのは、35mmとかコンパクトデジカメとかのフィルムやセンサーの大きさが小さいカメラですが、そういうレンズは、ライカとかコンタックス(今はもうないか)の独壇場(ニコンも良いレンズ作ってるけど)なので、芸がありません。

 

それで、古今東西のレンズの面白さを堪能したい方には(「カメラ小僧」の発想だな)シノゴとか中判のカメラを使うことをお勧めします。最近のレンズでは、フジの中判カメラについてるフジノンなんかプラスチックでできているそうですが、素晴らしいレンズです。ピントがカリカリし過ぎないで、ボケもうるさくなく、モノクロで使っても上品なコントラストでお勧めです。あと、昔のフォールディングカメラについているツァイスのアナスティグマート(Anastigmat)なんかレンズ三枚の構成だそうですが、とても上品なレンズです。レンズの枚数は大概少ない方が良いですよ(駄目なレンズも多いけど)。

 

私の個人的なお気に入りは、KodakのEktar 127mm f4.7です。これが「暗い」「小さい」「安い」の3拍子そろった結構渋いレンズなのです。コマーシャル・エクターも良いと聞くのですが、私はお金がないので持っておりません。ワイド・フィールド・エクターも良いそうなので、いつか手に入れて使いたいと思います。ダゴールも良いと聞くのですが、売っているところを見たことがありません。

 

私はスナップショットが好きなもんで、シノゴの写真はあんまり最近撮っておりませんが、いつかはシノゴで夜景とかのポートフォリオを作りたいと考えています。その時は、見に来てくださいね。

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コメント: 1
  • #1

    早漏 (火曜日, 05 5月 2015 03:10)

    「寒いからさ、手???繋ごっか?」